5月 第1回新・吃音勉強会  

●当事者研究のホットトピック(担当:山田)

 2020530日、Zoomによるリモートで、第1回 新・吃音勉強会を開催いたしました。
参加者は、担当者も含めて6人でした。比較的遠方から参加された方も2名いました。Zoomによるリモートでの例会開催には、当初、抵抗感もありましたが、遠方から参加しやすいという点ではメリットも大きいのかな、と感じました。「今後も、リモートでの開催をしてほしい」という希望もありましたので、緊急事態宣言は一旦解かれましたが、今後とも、しばらくは、リモートでの新・吃音勉強会の開催を予定しています。
 第1回 新・吃音勉強会は、2015年に開催した第1回吃音勉強会「当事者研究の紹介と実践」に合わせて、当事者研究をテーマにした勉強会「当事者研究のホットトピック」としました。自己紹介(名前、かんたんな自己紹介、近況報告、今日参加をした理由)を一人ずつ共有した後、会と記録についての説明を行い、そして、当事者研究についてのかんたんな説明(第1回吃音勉強会で使用したもの)、そして、休憩をはさんで、ワークシートを使った当事者研究の実践(熊谷新一朗編『当事者研究をやってみよう』に収録されている綾屋紗月『2019年度版当事者研究ワークシート』を使用)を行いました。本当は、の後に、当事者研究に関連する最新の論文を紹介し、吃音と照らし合わせて内容について対話する話し合いの時間を設ける予定だったのですが、時間の都合上、今回は、省略しました。
以下は、会全体についての私の感想です。
 はじめに行ったの当事者研究についての勉強会は、5年前の吃音勉強会で使った資料をそのまま使用しました。資料は、哲学者の石原孝二さんが当事者研究について解説した文章(『当事者研究の研究』収録)などを元に僕がスライド作りをしたものです。「当事者研究とは何か」については研究者によって色々な説明があり、統一的な見解が確定しているというわけではないと思いますが、ここ数年間は、熊谷晋一郎さんによる当事者研究についての説明に触れる機会が個人的には多かったので、石原さんの説明を読み直したことで、ここ数年間での当事者研究の広まり方の変化を実感しました。もちろん、石原さんの当事者研究観が古いというわけではありませんが、熊谷晋一郎さんが定義したり解説する当事者研究についての射程範囲とは違うところも多いのかな、と改めて感じました。
 
次に行ったの当事者研究の実践に関しては、ワークシートを使用した当事者研究会を実際にファシリテートするのが個人的にははじめての経験でした。しかし、遅れて参加をした参加者の方を除いて全員が発表でき、共感的な応答や、研究の態度での質問、また、ユーモアもあり、個人的には「割とうまくいったのではないか」と感じました。「よくできたワークシートだな」と改めて思いました。

 私も含めて参加者が一人ずつ発表をしたのですが、研究テーマは、「吃音の研究」だけではなく、「片づけられない研究」「話過ぎてしまうことの研究」「失恋の研究」など、かなり多岐にわたった当事者研究が発表されました。 私は、失恋の研究について発表しました。最近、自分自身の加害者性について考えることがあり、ぐるぐるとした罪悪感にとらわれて、うまく当事者研究できないことも多いのですが、参加したその時の自分なりに、改めて自分が抱えている問題を整理できてよかったです。
 当事者研究の面白さの一つは、「それぞれが自分自身の具体的な経験を語りながら、その彼方にある普遍性に、聞き手である他の参加者たちが共感する」ということにあると思います。「片づけられない研究」も「吃音の研究」も「話過ぎてしまうことの研究」も、僕が発表した「失恋の研究」の内容と通底する構造や共感できる部分が多くあるように感じられ、それぞれに違うテーマではありましたが、自分自身の問題についての気づきの多い当事者研究会でした。
 用意していたけれど、紹介できなかったの論文は、次回以降に担当する新・吃音勉強会で、あらためて、紹介し、参加者で対話する時間を作りたいと考えています。
担当者としてもとても有意義な時間でした。参加者のみなさん。ありがとうございました。

 

参加者の感想(一部)
・久々の吃音勉強会でしたが、私はあえて吃音以外の悩みを提起しました。「片付けられない

 人」ということで、自らの収集癖に起因する問題について研究しましたが、フィードバックでは

 思いのほか共感が得られ、もしかしたらこれは吃音者共通の問題なのでは、との思いに至り

 ました。今回はZoomでの開催となりましたが、勉強会との親和性が高いツールだと感じまし

 た。コロナ自粛は解除されつつありますが、遠隔地からの参加もありとても有意義なZoom

 の開催継続を支持します。ありがとうございました。

・私は「吃音」を当事者研究のテーマとしました。自分の苦労したこと、悩みなどを人に話すこと

 は勇気があることだけど、話すことで心が解放されたり、共感してもらうことで私の悩みは私

 だけのものではないんだと感じることが出きました。また、意見もらうことでこれから生きてい

 く上での力になったと思います。とても有意義で多くのことを得られた時間でした。

・吃音の話一辺倒だと同じ話題のループになりがちなのでテーマを縛らず限らず色々な問題に

 ついて話せたのは良かったです。最後に行った恋愛についての話はデリケートな問題なので

 扱いづらかったり空気を読みあった当たり障りのない話に終始しがちだけど吃音者にとって

 は間違いなく切実な問題の一つなのでもっと掘り下げていってもいいと感じました。
 
オンラインで開催の例会は不慣れで違和感を覚えるところもあったけど遠方の人や出先での

 参加もできて便利なので定期的に行ってもいいと思いました。